慶應義塾 塾員センター小島与志生部長からの総会挨拶状

慶應義塾の近況について(塾員センター)

調布三田会の皆様、平素より慶應義塾の諸活動に対しまして格別の御高配を賜りまして、まことに有り難うございます。堀尾 明会長様のご主導のもと、本日は、対面とオンラインを併用したハイブリッド形式により、定時総会を開催されますことを心よりお慶び申し上げます。

(1)さて2020年は、社会全体が、新型コロナ禍による大きな影響を被りました。皆様の母校・慶應義塾におきましても、例えば学事面において、大学卒業式・大学入学式は式典の挙行は見送られ、やむを得ずオンラインによる動画配信となりました。そして、政府による第1回目の緊急事態宣言の発出を受けて、キャンパスの一時閉鎖や、授業を全てオンライン方式に切り替える等の対応がとられました。その後、秋学期には、授業の一部で対面方式を再開するとともに、体育会の練習や学生団体による課外活動も段階的に再開しながら、塾生一人ひとりのキャンパスライフを取り戻すべく、長谷山 彰(はせやま あきら)塾長のもと、全塾を挙げて取り組んでまいりました。

(2)その一方で、経済状況の悪化等により、塾生本人のアルバイト収入の大幅減少や保証人の方々の家計急変に起因して、経済的苦境に陥った塾生も少なからず生じました。これを受けて慶應義塾では、独自の奨学基金を積極的に活用するとともに、さらに奨学金枠を約5億円積み増す等の方策を講ずることにより、約1,800名の大学生、大学院生、私費留学生に、一人当たり最大40万円の返済不要の奨学金の給付等を通じて支援に繋げました。これには、昨年5月のゴールデンウィーク後に立ち上げて以降、塾員の皆様をはじめ多くの方々からご賛同を賜り、現在も引き続き取り組んでおります「緊急支援募金のお願い(慶應義塾大学修学支援奨学金/同大学病院医療支援資金)」にお寄せいただいた貴重なご芳志も活用させていただいております。あたたかなご支援に対し、この場をお借りしまして、あらためて心より厚く御礼申し上げます。

(3)翻りまして、全体としてこのような厳しい状況にありましても、塾生諸君は本当に頑張ってくれています。その一例として、昨年6月には、医学部生有志と慶應義塾大学全塾協議会(塾生生活の基盤を支える塾生の自治組織)が協力して、塾生向けに新型コロナウイルスの基本的な知識や感染対策を紹介する特設サイト「塾生 新型コロナウイルス対策のすゝめ」(学内限定公開)を立ち上げて、塾生目線での啓発活動に着手しています。

(4)また、昨年7月には、湘南藤沢キャンパスでは、スマートフォンやパソコンなどのさまざまなIT環境からバーチャル空間に集って遊べるバーチャルSNS『cluster(クラスター)』とTwitterのライブ配信により、例年の対面形式に代わる新たな挑戦として『オンライン七夕祭(たなばたさい)』が開催されました。

(5)さらに、昨年11月には、近年、新型コロナ禍の以前には20万人が来場するギネスブック級の学園祭となっていた『三田祭』も、三田祭実行委員会の塾生諸君が創意工夫を凝らし、決して諦めることなく努力を重ね、会場と観客をオンラインで結ぶハイブリッド方式により見事に実現してくれました。そして、その他のキャンパスにおいても、さまざまな取り組みが行われています。

(6)他方、信濃町の慶應義塾大学病院では、昼夜を分かたず全力を挙げて、新型コロナウイルス感染症との闘いが続けられています。当初、昨年3月に他院からの入院患者受入れを発端に院内感染が発生する等の事態が生じ、塾員の皆様をはじめご関係各位にもご心配をおかけいたしましたが、適切な対応により、お蔭さまにより早々に収束を図ることができました。

(7)さて、年を越えて本年(2021年)を迎えましても、第2回目・第3回目の緊急事態宣言の発出とも相俟って、今日に至るまで制約の多い不自由な状況が続いております。しかしながら、そのような最中にありましても、本年3月の大学卒業式、4月の大学入学式は、ソーシャルディスタンスの確保を含めた感染症対策を十分に講じたうえで、卒業生・新入生に加えて、卒業25年・卒業50年の招待塾員の皆様を、2年半にわたる建て替え工事を経て昨年3月に竣工した『新・日吉記念館』にお迎えして挙行することができました。

(8)また、本年4月には、義塾所蔵の学術資料の収蔵・展示と、それらを活用した教育・研究活動を主たる使命とする新しい展示施設「慶應義塾ミュージアム・コモンズ」が、その中核的施設となる三田キャンパスの東別館において、事前予約制による一般公開を開始しました。

(9)あわせて、慶應義塾の歴史的シンボルである三田キャンパスの図書館旧館内に、『福澤諭吉記念慶應義塾史展示館』が設けられ、本年5月の開館に向けて準備が進められています。いずれも、緊急事態宣言の延長により、やむを得ず、一時的に公開見合せ等の対応をとらざるを得ない状況となっておりますが、も予想されますが、将来に向けて、是非お立ち寄りいただければ幸いに存じます。

*参照先を追記しました
https://history.keio.ac.jp/

(10)そして、本年5月27日付で長谷山塾長が任期を終えられ、翌28日付で理工学部教授の伊藤公平(いとう こうへい)次期塾長が就任されます。昨年11月に公表された、慶應義塾にとっての新たな取り組みとなる『東京歯科大学の歯学部の慶應義塾大学への統合および法人の合併』に向けた本格的な準備への着手も含めて、皆様の母校・慶應義塾も、また一つの節目を迎えることになってまいります。

結びとなりますところ、国を挙げてワクチン接種に向けた取り組みが進められる中で、一日も早く新型コロナ禍が本格的な終息に向かいますよう心、より御祈り申し上げております。あわせまして、福澤先生の言われる「人間交際(じんかんこうさい)」を、1986(昭和61)年の創立以来、確かな同窓会活動を通じて実践し続けてくださっておられる、調布三田会の皆様のご健勝とご多幸、ならびに本日のご盛会を心から祈念申し上げまして、ご挨拶に代えさせていただきます。ご清聴、有り難うございました。

2021年5月16日

慶應義塾塾員センター部長

小島与志生(こじま よしお)